【高山街あるき】現代の住まいへのヒントも!吉島家住宅は優れた町屋の例!



12月半ば、JR東海ツアーで予約して飛騨高山旅行へ。
2日目は高山市街散策。
駅に着いて昼食後まず向かったのは重要文化財の『吉島家住宅』。

『吉島家住宅』外観。

学生の頃行って感激したので、同じ建築史研究室出身の夫にもおススメしたく再訪。
「古い町並み」の中心からは外れているので他の観光客はまばらでしたが
隣の『日下部民藝館』と共に国指定の重要文化財なので
民家建築、町屋建築が好きな人には良いエリアです。

吉島家住宅とは?

両替商と造り酒屋として手広く事業を行ってきた豪商の住宅で、
現在のこの建物は明治40年に建築されたものだそう。

保存されている日本建築の中でも
城郭や社寺とは違い、
商いの店舗を兼ねるとはいえ機能が重視される『住まい』なので
現在の住宅に通じるものがあります。

私は大学4年の頃建築史研究室で日本建築史を専攻していて
各地の民家園や武家屋敷を見学してまわりましたが、
これほど見応えのある民家は他にありません
さすが豪商!

大人は500円 小中学生は300円で入館できます。
建築に関心がないと高く感じるかもしれないですが、
建築的価値は高く、色々な示唆を与えてくれるので
建築に関わる職や学生はぜひ一度は見ておきましょう。

現代の住まいにも十分参考になる要素が詰まっているので
家を建てようと考えている人にもおススメです!

大迫力の土間

町屋は道沿いの軒高が一様に低く揃えられているので
景観も美しく、かつ落ち着いた佇まいで親しみを感じられるのが外観の特徴ですが、
低い軒先をくぐって建物内に入ると、
途端に天井が高く開放的な吹き抜け空間が拡がります。

迫力の梁!と高窓からの採光。

木の自然のままの曲線が活かされた梁などの構造材が
高窓から差し込む自然光に照らされ
とてもダイナミックで迫力ある空間を生んでいます。

道路に近いエリアの土間まわりはパブリックな商いの場、
奥は台所や井戸などプライベートな生活(主に家事)の場となっています。

繊細な数寄の座敷

民家らしい急な階段を上ると生活空間だったと思われる2階へ。

道路に最も近い2階の部屋は三室並ぶ。うち1室は洋間風に設えられていて、暮らせそう。

まずは一番道に近い部屋。
ここから屋根勾配に沿って少しずつ部屋が上がっていきます。

少しずつ床高が上がっていく2階の部屋。

この、奥へと徐々に高くなるかんじが、
変化と奥行きが感じられて楽しいです。
そして天井高が低いため落ち着きます。

一番奥の和室。中庭に面していて明るい。

一番奥はご主人の主室でしょうか。
床などきっちり設えられているけど1階の応接間と比べるとくだけた、
落ち着くプライベート空間というかんじ。
中庭に面していて明るいです。

1階の中庭に面する応接間 と思われる部屋。

また1階に戻り、こちらは来客をもてなす応接間と思われます。
上の写真に比べると床回りなど、格式高く造られているのが分かります。

半屋内の奥土間

玄関を入ってすぐのダイナミックな土間
屋根勾配に沿って変化する、落ち着いた2階の座敷

外観からは予測できない、
全く雰囲気の異なるこの二つの空間が同居している点が
吉島家の見どころだと思います。

しかし個人的にはまだ重要な見どころポイントがあって、
それが中庭に面する奥土間。

井戸を囲む半屋内空間。

見る庭とは別に、井戸があり家事など「お勝手」として使われたであろう
家事のための庭まわりの生活空間です。

昔は水を汲み上げたり、洗濯したり・・
といった家事に、より広いスペースを要したでしょうし、
ここまで大きな家だと尚更。
完全な外でもない、中でもない、こういった土間の半屋外スペースが
重宝されたのだと思います。

「うなぎの寝床」型の町屋のため
道路から一番奥でプライベート度が高く、
家事のための空間なので大きすぎず、小さすぎない、
機能的なサイズ感がちょうどいい。
半屋外で外と程よい関係性があって居心地が良い。

現代の住まいにも取り入れられる
心地よい住まいの要素が学べます。

中庭から空を見上げる娘。

写真のような娘の様子をみて、
当初からこんなふうに、
大人たちが家事をする周辺で、
幼い子供はチョロチョロ遊んで過ごしたんだろうな・・
なんて思いました。

内外があいまいで、用途も複合的な、おおらかな場所。
家の中(道路に面するところが一番パブリックな「表」だとすると、最も「奥」)
でありながら、自然の変化(採光、風雨)を感じられる場所。
現在は家事のためにこういった場所を作る必要はないけど、
こういった場所を用意すると、
ただの四角い部屋を並べるよりは、
豊かな暮らしができるんじゃないか。
そんなことを感じます。

まとめ

簡単だけど以上です。
道路側の庭まわりの部屋や、土間での商いエリアを支える裏方エリア。
奥の中庭を眺められる私室。
紹介していない部屋もまだたくさんあるので、
ほんと見応え十分です。

良い意味でバリアフリーでないので、
子どもも(ちょっと危なっかしいけど)楽しんでいました。
文化財ということもあって、子連れは気を使いますが、
(うちのように1歳では記憶に定着しないでしょうが)
子どもにとってもこういった歴史的な住まいのかたちを体感できるのは
貴重な学びの機会になるのではと思います。
しかも良質な文化財。

町屋は外観は周囲に合わせて街の景観を整えながらも、
内部では開放的で拡がりのある空間、
落ち着く小さな個室、自然を生活の中に取り入れる庭など、
バリエーションに富む豊かな生活空間を展開するという、
とても優れた、現代にも是非活かしたい優れた住宅形式だと解ります。

高山で観光客の最も多い「古い街並み」エリアからは少し離れてしまいますが、
ここでは表層だけでなく、本当に歴史的で貴重なものに触れられるので、
一見の価値あり。おススメです!

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ABOUTこの記事をかいた人

静岡市在住、長男(11)次男(8)長女(6)を育てる母です。 お出かけが大好きで週末はどこかしらへ出かけているので 子どもとキャンプ・旅行・公園などのお出かけ記録をメインに、 育児、読書の記録を綴っていこうと思います。 また仕事は建築士をしているので、 職業柄、アウトドアのお出かけにも建築士的視点が混ざっています。